ZENITH PUTTERが選ぶ、二つのステンレス素材 ― SUS303PとJPS、その違いとは

TECHNOLOGY / MATERIAL

インゴットから削り出すパター


ヘッドはネックを含めてインゴット(塊)から削り出されます。
パーツを溶接でつなぎ合わせるのではなく、ひとつの塊から一体成形することで、
重量やバランスに狂いのない、設計通りの数値を実現します。
マシニングセンタによる精密な切削は、フランジの形状やトウの部分といった繊細なラインまで、
美しく、かつ機能的に仕上げることを可能にしました。
フェース面に施すミーリング加工もまた、見た目の意匠であると同時に、
次に紹介する「素材」の個性を引き出すための技術です。


SUS303P(プレミアムステンレス)


削り出しパターに広く用いられるSUS303に、独自の熱処理を加えたもの。
高密度・高強度へと生まれ変わり、「ソリッドに弾く感覚なのに、柔らかい」
という新しい打感を実現しました。


JPS(ジャパンプレミアムステンレス)


既存の規格をベースにするのではなく、国内の金属メーカーとともに一から配合とテストを重ねて生み出した、
最高峰の素材です。独自のクロム・ニッケルの含有量に加え、ある成分を組み合わせることで、
高密度・高強度に加えて優れた耐食性も兼ね備えました。
どちらが優れているということではなく、求める打感やサウンド、
プレイヤーの好みによって選び分けていただくためのふたつの選択肢です。
素材とミーリングが組み合わさることで生まれる音と感触の違いは、
ボールのディンプルとの相性にも影響し、インパクト時の横ずれを軽減することにもつながります。

採用する理由

ZENITHはもともとゴルフメーカーではなく、航空宇宙部品を手掛ける金属加工会社(日本ジオニック)です。
つまり「パターを作りたいから加工技術を身につけた」のではなく、逆に「高精度加工の技術がすでにあったから、
その技術を活かせる製品としてパターに参入した」という順序。
インゴットからの削り出しという製法は、まさに航空宇宙部品づくりで培った技術をそのまま転用したものです。

打感・打音に現れる違い

パターの製造には、フェース・ネック・ヘッド本体を別々に作って溶接する方式もありますが、
これは重量分布に微小なブレが生じやすい方法です。

インゴットからの一体削り出しは、継ぎ目がないことで「寸分の狂いもない設計通りの数値」を保証できるため、
打感・打音・精度を売りにする上で理にかなった選択です。
打感・打音が「気持ちいい」と感じられると、ストロークへの迷いが減り、結果的にストロークの再現性が上がります

性能への影響

一体削り出しによる重量配分の均一性と、素材硬度による打点ごとの感触のムラの少なさは、「同じ強さで打った感覚が、毎回同じ距離になる」という再現性につながります。

製造方法の違い

鋳造(キャスト)


素材を溶かし、金型に流し込んで形にする製造方法 大量生産に向き、低コスト。
ただし冷却時の収縮で内部に微細な密度ムラが出やすい。
鍛造(フォージド)
金属を叩く・押し出すことで組織を圧密化してから成形  内部の結晶組織が緻密になり、
打感が柔らかくなりやすいとされる。
量産には向くが、多品種少量には不向き。複雑な内部形状を作りにくい。


削り出し(ミルド)


素材の塊を削って形にしていく製造方法で手作業の工程が多く、一本一本に手間がかかる
素材の内部組織が均一な圧延材を材料とするため、鋳造・鍛造製品のような密度のバラツキが発生しづらく、
不確定要素が少ないのが利点。ZENITHが採用する方式


カーボンスチール(軟鉄)


削り出しパターがで始めた頃の素材はほとんどの物が軟鉄でした。柔らかい打感が特徴だが、
鉄は錆びるので、何らかの表面処理が必要という弱点がある


ステンレス(303系)


耐食性に優れ、軟鉄よりやや硬めの打感になりやすい。ZENITHのSUS303P・JPSもこの系統

削り出し加工について

ネックを含めて塊から削り出すという工法は、逆に言えば最終製品の何倍もの体積の金属を
切削で「捨てる」ことを意味します。素材コストのロスが大きく、また加工時間も長くなるため、鋳造や鍛造に比べて生産効率は低くなります。


精密部品加工で培われた多軸(5軸等)マシニングセンタを用いることで、一度の据え付けで複雑形状を仕上げ、累積誤差を抑える手法は、精度を売りにするZENITHにとって理にかなった工夫と言えます。

パター製造工程について

①材料測定+穴あけ 縦・横・長さ・重さを測定して、材料の比重を計算する。

②1工程 5軸MCに材料をセットした後、測定器を使いX軸の平行を出す。
加工終了後:クランク→ホーゼル径、ベンド→チップ径を測定器で測定し、100分の1単位で寸法調整

③2工程 5軸MCにバイスをセットし、各種モデルに合わせた治具を用いて段取りをする。
側面のXY軸、上面のXY軸を測定器を使って
平行を出す

④仕上げ
⑤磨き
⑥色入れ
⑦組み立て

用語説明

303P (303 premium)


SUS303に独自の熱処理を加えたもの。「P」はプレミアムを指し、
JIS規格上の正式名称ではなく、ZENITH独自のブランド表記。


JPS(Japan Premium Stainless)


ZENITHが国内金属メーカーと共同開発した独自配合のステンレス素材。
既存のJIS規格をベースにせず、クロム・ニッケルの含有量を独自に調整し開発された、ZENITH独自の商標的な素材名です。